学校の先生がいない!!

学校の先生がいない!!
深刻な教職員の人員不足にどう対処する?

新学期当初に学校に必要数の先生がいない。笑い話ではなく、本当の話で事態は深刻です。大分県内の小中学校でも、2022年4月8日現在で小学校29人、中学校17人、義務教育学校3人、県立高校2人、特別支援学校2人の合わせて53人の教職員が足りていません。今後この数は、減るどころか増えていく可能性があります。なぜなら、病休や産休・育休に入る教職員もいるからです。

この傾向は大分県だけではなく、今や全国的な教員不足に陥っています。この原因について大分県教委は、「大量採用した教職員が退職を迎え、その分採用者数が増えたため、臨時任用教職員の数が減って補充が効かなくなった」「教員免許更新制度の時、更新しないまま免許が失効してしまった人がいる」などと説明しています。それも一因でしょうが、それだけでこんなにも人員が不足したりするでしょうか。
県教委は、大分大学教育福祉学部に対し教育学部の入学定員数を増やすよう要請するようですが、少子化の中どこの大学、どこの学部も入学者が欲しい状況です。若者が進んで教職の道を選んでくれなければ、定員数だけ増やしても結局は人が集まらない状況の「定員割れ」になれば、文部科学省も黙ってはいないでしょう。

これから「少子化」と呼ばれる時代、いかに若者・次世代に選んでもらえるか。教職員のみならず、自治体の技術系職員も定員割れを起こすなど、人員不足で災害復旧事業などの大きな支障が出ているといいます。どこも欠員だらけで、どの職種・どの業種も人が集まる工夫や魅力が必要です。では、今の大分県の学校現場の状況は、若い人が進んで選ぼうと感じる魅力あふれる職場でしょうか?

大分県には、他の県にない独自の「人事ルール」が存在します。特に新採用から概ね10年ほどの教職員に、いろいろな地域や学校で様々な体験や研修を積んでもらうというねらいのもと、広域人事異動をするようになっています。では、この人事ルールが若い教職員にどのような負担を強いているのか、教職員組合がとったアンケートの中から見てみたいと思います。

次の表は、教職員組合が組合員(概ね10年3人事地域異動対象者)を対象にとったアンケート調査を集計したものの一部です。採用者数が多い小学校勤務者が最も多く、次いで中学校、養護教員となっています。年齢も新採用者が多いため20代が最も多くなっています。つまり、就職してこれから生活設計や人生設計を始めようとする若い人たちが主だということです。
そのような彼・彼女らが、おおよそ10年間にわたり、3年ごとに大分県下全域をあちこちに異動させられるということがどのようなものなのか、私たちは知らなければなりません。

困りや不安や負担と感じることで最も多かったのは、結婚や出産、育児に関するものでした。当然でしょう。20代が最も対象者として多い年齢ですから。次に、3年ごとの異動のたびに住居を変えざるを得ない教職員も多いようで、引っ越しにかかる経済的負担が大きくのしかかっているようです。採用されて間がない新米教職員ですから、引っ越し費用の負担は大きなものです。しかも教育委員会がその負担を補充してくれるわけではありません。
将来設計に関わる不安と経済的負担、この二つをとってみても、若い教職員にとってこの人事ルールがいかに重荷になっているかが分かります。人の子どもの教育をする仕事をしながら、自らの結婚や子どもの妊娠・出産・育児にためらいを感じてしまう。子どもたちを育てる教職員が、自らの家庭や子どもを持つことができなくて、大分県の少子化問題が解決するでしょうか。それだけを見ても、この人事ルールがいかに罪深く無責任なものであるか、理解できると思います。
若いうちに、いろいろな規模の学校を経験させて研修させることが人材を育成することにつながる、と教育委員会はいいます。これこそ教育が何たるかを知らない者の言うことです。教職員を育てるのは学校の規模ではなく、子どもたちや周りの教職員との関わりです。もちろん、学校の規模や地域の違いは全く関係ないとはいいません。しかし、いろいろな個性を持った子どもたちと自分の周りの教職員との関係の中で、先生としての力が磨かれていくのです。2〜3年ごとにくるくる学校をかわることで、人材育成などできるものではありません。少なくとも、対象者の先生方にメリットを聞いても、「まあ、いろいろな学校に行けたことかなあ」ぐらいしかないようです。逆にデメリットはたくさん出てきて、「早くこんな人事はやめてほしい」と皆さん異口同音に訴えます。

なお、よく「大規模学校ばかり経験していると、小規模学校に行った時に戸惑う。逆もまたある」と言われますが、私の経験から言ってもそんなことはありません。教員はそれほど適応力がないことはありません。確かに子どもたちの数の違いに戸惑うことが、最初はあるかもしれませんがすぐに慣れます。だって、やることに違いはないのですから。学校の様子にも1年2年いれば慣れてしまいます。
それよりも最も重要なのは、管理職の違いでしょうか。特に、若い教職員の自主性を認めながら、大事な所では的確なアドバイスができ、若手のやる気を出させる指導力を持った校長がいるか、それとも常に監視し頼みもしないのに口を出し、しかもやる気を削ぐようなアドバイスしかできない管理主義的な校長がいるかが、1番影響が大きいと言えます。教育委員会は管理職試験を見直し、頭でっかちな管理職を作ることをやめ、真に指導力のある誰からも尊敬されるような管理職を採用することの重要性を認識すべきであると考えます。

大分県教育の未来をし背負って立つ若い先生たちに、このような仕打ちを続けていれば、大分県の学校の教壇に立つ若い教職員はすぐにいなくなるでしょう。現に2022年の小学校教員採用試験の倍率は1.00倍になってしまいました。これは、採用予定者数しか希望者がいないと言うことで、予備の教員(急に教員の数が足らなくなった時の補充要員)がいないことを表します。こんなことが続けば大分県教育は「先細り」し、やがて潰れてしまうでしょう。この深刻な教職員の人員不足に、大分県教育委員会はどう対処するのでしょう。


https://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/20220720/5070013236.html (NHK大分NEWS WEB 2022年7月20日付け)より

大分県教育の未来をし背負って立つ若い先生たちに、このような仕打ちを続けていれば、大分県の学校の教壇に立つ若い教職員はすぐにいなくなるでしょう。現に2022年の小学校教員採用試験の倍率は1.00倍になってしまいました。これは、採用予定者数しか希望者がいないと言うことで、予備の教員(急に教員の数が足らなくなった時の補充要員)がいないことを表します。こんなことが続けば大分県教育は「先細り」し、やがて潰れてしまうでしょう。この深刻な教職員の人員不足に、大分県教育委員会はどう対処するのでしょう。

教育は国家100年の計。資源に乏しい日本にとって、子どもたちは宝。その子どもたちを育てる教育こそ大切です。大分県は、かつて多くの学者や政治家を排出した教育県でした。それは、福沢諭吉や広瀬淡窓など優れた教育者がいたからです。子どもたちに豊かな教育を提供するためには、教職員に子ども一人ひとりとゆっくり向き合う時間が保障されなければなりません。遠い学校へ異動し、通勤に片道1時間以上(往復2時間以上)かかれば、ゆっくりどころか疲労が溜まる一方。教職員が授業に集中できるよい環境づくりこそが、教育委員会の大事な仕事。ぜひ、大分県教育委員会には子どもと先生方のために、教育委員会としての本来の役割に立ち返っていただきたいと切に願います。