今、学校に必要なもの

今、学校に必要なもの
人☆お金☆時間(ゆとり)☆
どれも足りない!教職員の善意で成り立つ教育とは?

7月中旬から始めさせてもらった「学校訪問(調査)」。年に最低1回、いやほんとは学期に1回ぐらいは回りたいのですが、コロナがあり学校は多忙であるなどで、できていませんでした。
今回は少しコロナ感染も落ち着いてきたかな?と思って計画したところ、第7波は予想以上に多くの方が感染しました。しかし、子どもたちが夏休みに入るタイミングであることや、どうしても今の学校現場を見ておきたいという思いから、臼杵市と津久見市の小・中学校、特別支援学校を訪問・調査させてもらいました。すると、今大分県の小・中学校の抱えている共通の困りが見えてきました。

今回は小学校15校と中学校1校、特別支援学校(県立)1校に行ってきました。調整が合わず、訪問・調査できなかった学校も数校あります。特に中学校は学校側の事情で行けなかったので、また調整して訪問したいと思っています。
さて、お話を聞くと、今の学校現場が抱えている共通した大きな課題が見えてきました。順番にまとめてみます。

1 人が足りない!
大分県や臼杵市だけの問題ではなく、全国的に深刻な問題です。子どもの教育は人である教員が行うのですが、その教員が足りない!国の政策として、教職員の数を抑制してきたツケが現れてきています。
今、小学校は35人学級を進めている学級数が増えているところもあります。また、最近は支援を要する子どもたちの数が急増しています。そのため、特別支援教育の免許を持った教員が必要ですが、その数が少ないのです
なぜ、今になってこのように教職員が足りないのでしょう。
大分県でいえば、教職員になる若者が減少している、つまり教職という仕事に魅力がないのです。大学の教育学部の卒業生のうち、約半数ぐらいしか教職員採用試験を受けていない事実がそれを証左しています。事実、22年の大分県教員採用試験の志願者倍率は、小学校ではとうとう倍率1.00倍になってしまいました。では、若い人はどうして教職を選ばないのか。
一つは、ここ最近学校現場の「ブラック」な働き方がマスコミ等で報道されたことがあります。教育実習で教員の過酷な働きぶりをみて「自分にはできない」と、教職を諦めたという話もあります。
もう一つ、敬遠される理由には、大分県教委が独自に行っている頻繁かつ行き過ぎた広域人事があります。新採用から概ね10年までの若い教職員を対象に、この異動ルールが始まって10年以上になり、教育学部の学生の間では周知のことだそうです。「遠くへ飛ばされる」「生活が苦しい」「結婚も子育てもできない」「将来の設計ができない」など、人事によるデメリットが言われ敬遠の大きな原因になっているのです(県教委は認めません)。
また、新採用教員に聞いたところ、「そのような異動があるということを、採用されるまで全く説明がなかった」という不満を多く聞きました。これは、ある意味アンフェアーなやり方です。その他、福岡県や北九州市など近隣他県の採用試験を受けそこの教員になったり、他県の教育大学に行き大分県に帰らなかったりという現状です。

影響は教職員だけではなく、子どもたちにも現れています。その学校に3年いた教職員は異動となるため、子どもや親から「あの先生は3年経ったらこの学校からいなくなる」と言われ、結果子どもたちが落ち着かないといいます。
ある保護者は「先日、久しぶりに学校に行ったら、職員室にいる先生で知った顔の人は誰もいなかった」とびっくりしていました。小学校も中学校も子どもや保護者との信頼関係が一番大事なのに、信頼ができるころ別の学校へと異動する。新しい学校で、また一から信頼関係を作り始めなければなりません。その他、その地域の伝統行事を学校が担ってきたところもありますが、その継続ができなくなっている学校も増えています。
やはり義務教育の場合、学校の教職員がその地域に近いところにいることで、教育効果が上がるという事実があります。

教職員を一人でも多く確保することが、今求められています。優秀な教職員を確保することは、子どもたちの教育に大きく影響します。学校現場の多忙で過酷な業務内容の削減と、教職員に過大な負担をかける行き過ぎた広域異動人事ルールを今すぐ見直さないと、大分県の学校は優秀な教職員が少なくなり「先細り」となる可能性が高くなります。今がその見直す時期だと思いました。

2 お金が足りない!
臼杵市や津久見市の多くの学校の校舎は、古くて傷んだ建物が多いです。もちろん、新しくなった校舎もありますが、本当に少ないです。夏休み中の訪問・調査だったので、子どもたちの学習や生活の様子は見られませんでしたが、不自由なところがいくつもありました。
「2階のトイレが廊下の一番端で1箇所しかない。休み時間、子どもが殺到する」「水道が限られていて、休み時間に水を飲めない子がいる」など、普通では考えられないような事態が、学校では今も起きています。
さすがに、新型コロナウイルスに対処するための消毒薬や自動水栓などの設置はおこなわれています。また、熱中症で子どもが学校で亡くなった事故以来、エアコンがほぼ教室に設置されました(コロナ対策で換気をよくするため、窓を全開にするそうですが)。
人口減少に悩む臼杵市や津久見市では、十分な予算が教育関係に回らない現状もあるでしょう。しかし、地震や台風など大きな自然災害が起きたら、危険と思われるような建物が学校だったなんて、笑い話にもなりません。校舎をはじめ老朽化が進んでいるものは、県が補助をして速やかに対処するよう要求していきます。

3 時間が足りない(ゆとりがない)!
1の人が足りないと関係がありますが、働く教職員には時間が足らないなあと感じます。ゆとりがないのです。先生方はみな異口同音に、業務量は減るどころかどんどん増えていると言います。学校にいるときは、授業をはじめ子どもたちの指導に精一杯。さらには研修や出張があり、追い打ちをかけるように保護者からの相談(クレーム?)にも対応しなければなりません。中学校では部活動指導もあります。
教育委員会は、学校の働き方があまりにも過酷なので、「早急に『働き方改革』を進める」と掛け声だけは勇ましいのですが、現実はほとんど実感ができない状況です。
事務作業が多いと、教員は子どもたちとゆっくり話すことすらできなくなります。子どもたちが抱える悩みや相談事を聞いてあげられる時間がなくなります。子どもたちは、学力低下やいじめ、学校に来れない、体調不良、友だち関係、部活動の悩み等々、多岐にわたり課題を抱えています。ゆっくりと真剣に話を聞こうとすれば時間がかかります。そのゆとりがないのです。

まず、業務量を必要なもの、やらなければならないものに絞って削減すること。「子どもたちのため」という言葉でどんどん増えた仕事量を、思い切って削ることが必要です。
次に、やはり人です。AIとかICTとかリモートとか言われても、やはり教育は「人」が必要です。人を増やすことで、仕事を分散しゆとりを作る。そうすれば、一人ひとりの子どもたちと関われる時間が生まれます。価値観をはじめ子どもたちが多様化する時代に対応するためには、教職員の気持ちに余裕やゆとりが絶対に必要です。

実際には話を聞いて、もっとたくさんの課題や問題があるなと感じました。子どもたちの数は減ってきてはいるものの、いじめや不登校、保護者の対応など本当にいろいろな業務がたくさんあります。これまで、超勤手当の制度もなしに増える一方の業務(なかには、教職員がしなくてもよいものも含め)を教職員は「善意」でこなしてきました。しかし近年、それももう限界です。自己犠牲的な教職員の善意の上で成り立つ日本の教育とは何なのでしょう。
先生方が、心身ともに健康でやる気に満ちた姿であってこそ、子どもたちに生きて働く教育ができるのです。